【肉道場入門!】
★絶品必食編
小体ながらいい店に会えたときには、なんとも複雑な気持ちになる。人に教えたくなるが、評判をとって自分が行けなくなっても困るからだ。
昨年11月、東京・目黒にオープンした「クロ・デ・グルメ」はまさにそんな店だ。
パリの同名店でも働いたオーナーシェフが腕をふるう。
料理のスタイルは、正統派のフレンチだが、伝統的な形式にばかり、拘泥するわけではない。
この店のメニューは、あらゆる意味で、客に寄り添う。
料理に合うと思えば、ためらいなく、イタリアのワインをサーブするし、箸もナイフの脇にセット済み。どんな道具を使っても食べやすくなるよう、料理も調整されている。
訪れた日は冷製の細麺パスタ、カッペリーニがメニューにあり、香り抜群のサマートリュフが散らされていた。
ナイフ&フォークでも箸でも食べられる盛り付けで、しかも、料理7品+デザートで5500円という超破格値。
メインとなる肉料理は、後半に一気に追い込んでくる。
まずは去年閉店したパリの「クロ・デ・グルメ」本店のスペシャリテを受け継いだ「テート・デ・コション」。テートは頭、コションは豚を意味する。
豚の頭部まわりのタンやミミ、頬肉などをやわらかく加熱したものを筒状に成形し、カットしてカリッと焼き上げた。香ばしい茶色を口に運べば、口の中で肉がほろりと崩れながら、濃醇な風味が広がっていく。