大阪市を廃止し、特別区に再編する大阪都構想の住民投票の実施時期をめぐる判断が注目されている。大阪維新の会代表の松井一郎市長は11月1日の実施を目指すが、新型コロナウイルス感染が深刻化した場合は延期の可能性を示唆。ただし大阪府市両議会で協定書(設計図)を承認した後の延期については明確な法律上の規定がなく、公職選挙法の解釈が焦点になる。
「いざというときは、あらゆる手段を使って松井市長とも相談し、適切に判断したい」
吉村洋文知事は26日の府議会総務常任委員会で、感染状況の悪化を念頭に住民投票の実施時期についてこう述べた。
大都市地域特別区設置法(大都市法)は、府市両議会が協定書を可決・承認して府市に通知後、60日以内に住民投票を行わなければならないと定めている。
府議会は28日、市議会は9月3日にそれぞれ可決・承認する見込みで、予定通り運べば住民投票は10月12日告示、11月1日投票の日程で実施される。
ただし、これは感染状況が悪化しないことを前提としたスケジュールだ。住民投票の事務を担うのは大阪市選挙管理委員会のため、実施の可否は大阪市が最終判断する。吉村氏はそれを踏まえた上で、最終判断の時期に関し「(告示前の)10月上旬になると思う」と述べた。
問題は、延期判断の根拠となる法令とその解釈だ。大都市法で協定書承認後の延期に関する条文はない。
一方、公選法57条は「天災や避けられない事故により、投票できない」場合に選管が投票日を再設定するよう規定。告示後の延期を想定した「繰り延べ投票」といわれる。
阪神大震災(平成7年)や東日本大震災(23年)が発生した年は統一地方選が予定されていたが、臨時特例法を制定し、被災地の首長選や地方議員選を延期。沖縄県では台風接近により24年と26年に一部首長選の投票日を1週間延ばした。
いずれも投票所の開設が難しかったり、人命に危険が及んだりするため「投000800票できない」と判断された。
近畿大の上崎哉(うえさき・はじめ)教授(行政学)は「感染第1波の3~4月に選挙を行った自治体もある。繰り延べ規定は投票所を開設できない場合などに限って適用されるものであり、海外のロックダウン(都市封鎖)のようにならない限り、適用は難しいだろう」と話す。