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熊本、鹿児島両県に大雨特別警報が出てから11日で1週間。その後も九州を襲った連日の豪雨で、福岡県朝倉市や大分県日田市の温泉郷も大きな被害を受けている。両市は平成29年の九州北部豪雨で被災。今年は新型コロナウイルスの影響で一時営業を自粛しており、ようやく再開した直後、今回の豪雨被害に見舞われた。復旧を急ぐ旅館がある一方、経営者からは、見えない先行きに「もはや希望をなくした」という声も漏れてきた。(石原颯、花輪理徳)
「これからというときに」。福岡県朝倉市の原鶴(はらづる)温泉にある創業71年の老舗旅館「原鶴温泉 泰泉閣」。林恭一郎社長(45)は7日未明、旅館内の様子に言葉を失った。
1階の宴会場や調理場は泥水で浸され、バケツが浮いていた。夕方に一度水はひいたが、大雨は続き、深夜に再び冠水。温泉の源泉をくみ上げるポンプにも泥が入り込んだ。
この旅館は3年前も1階が浸水する被害を受けたが、その約2週間後には営業を再開。地元住民やボランティアには一時、無料で利用できるようにした。林社長は「何とか地元を復興させたい。その一心だった」と振り返る。
3年前の苦境を乗り切ったところで、今度は新型コロナウイルスの感染が拡大。その影響を受け、4月から6月末まで休館した。
「経営的には最も苦しかった」(林社長)時期が終わったと考えていた直後の再度の豪雨被害。ショックは隠しきれないが「熊本県の温泉地はもっと被害が甚大。下を向いていても始まらない。原鶴温泉の魅力を楽しんでもらえるよう準備を進めたい」。17日の営業再開を目指し作業を急ぐ。