その他の写真を見る (1/2枚)
九州を襲った記録的な豪雨で、福岡県と大分県では6日から浸水や土砂崩れが各地で発生した。両県は平成29年7月に40人が死亡した九州北部豪雨を経験しており、今回はその教訓をもとに、早期避難などの行動をとった住民が数多くいた。被災経験は、防災意識の向上にどう生かされていたのか。(松崎翼、石原颯、花輪理徳)
「豪雨が迫っています。すぐに行動してください」
大分県日田市上宮(じょうぐう)町。6日午前11時45分、町内の全約30戸に設置された防災情報などを伝える告知放送端末が鳴り響いた。
声の主は自治会の顧問、藤井隆幸さん(71)。市から避難勧告が出る約40分前だったが、雨雲レーダーを見て自主避難を決断、マイクに向かったという。結果的に上宮町で被害はなかったが、住民のほとんどが避難した。藤井さんは「3年前に山が崩れるのを目の当たりにした。惨状の記憶がよみがえった」と早期判断の理由を語る。
29年の九州北部豪雨では日田市や福岡県朝倉市を中心に死者40人、行方不明者2人という甚大な被害が発生した。これを受け、日田市は自主防災意識の向上を一つの柱とした復興計画を策定している。
上宮町は29年の豪雨で人的被害こそ出なかったが約8割の住宅が浸水や全半壊の被害を受けた。避難せず家に残った住民もいたことから、自治会は今回、より早い避難誘導を心がけたという。
同市大肥(おおひ)本町では、自治会が九州北部豪雨で大きな被害が出た7月5日を「防災の日」に指定し、毎年この日に防災訓練を実施している。防災士の資格を持つ住民も増やしており、今月6日から連日続く大雨では防災士同士が川の水位の状況を報告しあい、避難のタイミングを見極めている。