ベテラン記者コラム(11)

岡本綾子さんが怒った優勝会見「何もないなら帰るわよ」

岡本綾子さん
岡本綾子さん

 床に食べ物を落としても3秒以内に拾えば大丈夫-という「3秒ルール」なるものがある。コロナ禍の時代に実践する人は皆無だろうが、個人的には「7秒ルール」を守っている。絶対に7秒というわけでもないが、5秒は早いし、10秒では長い。非科学的な3秒ルールと同じくらいいい加減なものだが、今も自分なりに貫いている。その「7秒ルール」とは-。

 1990年9月に行われたゴルフの日本女子プロ選手権(栃木・広陵CC)。主戦場の米ツアーから帰国した岡本綾子も出場した。国内では前年までに30勝を挙げ、米ツアーはこの時点で16勝。1987年に男女を通じて日本人初の米ツアー賞金ランキング1位に輝いた女王の国内シーズン初戦だった。

 ゴルフ担当となった今は普通に会話し、食事もご一緒したことがある。しかし、手伝いで急きょ会場に行った当時はその他大勢の一人。18ホールをついて回ることが仕事で、話しかけることなどできるはずもなかった。

 初めて見る岡本さんは強かった。2位に5打差をつけて期待通りの優勝。しかし、優勝会見は意外なほど静かだった。始まっても誰も質問しない。実際は30秒程度だったと思うが、いたたまれない空白の時間はとてつもなく長く感じた。

 「何もないなら帰るわよ」

 岡本さんがボソッと発した言葉が合図となって会見が始まった。ゴルフの世界では冒頭の儀式かとも思ったが、そんなはずはない。岡本さんは明らかに怒っていた。あれから会見などで少しでも間が開くと質問するようになった。選手への申し訳なさと居心地の悪さを解消するために。もちろんほかの記者もいる。矢継ぎ早の質問は迷惑千万。でも、沈黙は怖い。そのあんばいが難しい。行きついた時間が「7秒」というわけだ。

 岡本さんに数年前、あの日のことを尋ねてみた。「覚えているわよ。だって失礼じゃない。人を呼んで質問しないんだもん。だから『帰るわよ』と言っただけ」。やっぱり怒っていた。7秒ルールには「ふ~ん。面倒くさ」と笑われた。

 海を渡り、居を構え、世界に挑んだ女性アスリートの先駆者である。30年前はバリバリの現役。当時の担当記者たちを一瞬ひるませたのであろう近寄りがたいオーラは今も健在だが、聞きたいことはまだたくさんある。面倒くさいと思われながらも、末永くお付き合いさせていただくつもりだ。(臼杵孝志)

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