厚生労働省は5月に発表した令和2年度の「熱中症予防行動」の注意事項として、「適宜マスクをはずしましょう」という文言を追加した。新型コロナウイルス対策に欠かせないマスク着用だが、それは一方で熱中症リスクを高める可能性もあるからだ。
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熱中症予防に詳しい、医療福祉センターさくら院長で、教えて!「かくれ脱水」委員会の委員長も務める、服部益治医師によると、マスク着用は熱中症の観点からみた場合、対策とは反対の行為になるという。
「人間は恒温動物なので、体温を一定に保つことで生命を維持しています。口や鼻で息をして熱をカラダの外に出し、体温を調節するわけです。マスクで顔を覆うと熱が外に出にくくなり体温が上昇し、これが熱中症対策に大きく影響します」
喉の乾燥を防ぐというマスクの働きも、熱中症には逆効果なのだという。
「マスクをすることで口の中の湿った状態が保たれるため、かえって喉の乾きを感じにくくなり、自覚がない間に脱水状態に陥ってしまう危険性が出てしまうのです」
つまり、マスク着用が必須の今年の夏は、例年以上に水分補給と体温調節を意識して過ごす必要があるということだ。
その際の鉄則として服部医師は以下の4点を挙げる。
(1)水分補給の基本は「水」
(2)喉が渇かなくても1時間ごとに100ccの水分補給を心がける
(3)首の回りや手のひらなど、血流が多い部位を冷やす
(4)軽い運動で涼しいうちに汗をかく練習をし、暑さに体を慣れさせる
こうした水分補給と体温調節は、やはり健康なカラダがあってこそ成り立つ。
「いくらこまめに水分を取ったり、体温が上昇しないよう注意しても、土台の体が健康でなければ意味がありません。特に今年の場合は、コロナに打ち勝つという意味でも体力(免疫力)の維持・向上が不可欠です。そのためには、十分な睡眠と適度な運動、栄養バランスの取れた食事を取るという基本の生活を送ること。シンプルですがそれが最も大事です」
そう話す服部医師が、免疫力の維持・向上のために推奨するのがバナナヨーグルトだ。
「ヨーグルトに含まれる乳酸菌とバナナの食物繊維が腸内環境を整え、免疫力の向上・維持につながります。また、自粛生活で筋力の衰えも懸念されるのでタンパク質を豊富に摂取できるし、乳たんぱくには、発汗を促してカラダに熱をこもりにくくする効果や水分を体内にとどめる効果も期待できます。さらにバナナは、ビタミンB2、B3(ナイアシン)、B6、B9(葉酸)などのビタミンB群をはじめ、ビタミンC、マグネシウム、カリウムなどが豊富なので、乳酸菌を含むヨーグルトと一緒に取ることは、熱中症防止、夏バテ防止に最適です」
とはいえ、カラダづくりは1日や2日でできるものではない。毎日の食事にバナナヨーグルトを取り入れ、それを習慣にすることが大事だと服部医師は話す。
相反する部分があるコロナ対策と熱中症対策だが、とにもかくにも、大事なのは体力(免疫力)の向上・維持を心がけること。コロナ禍が一刻も早く終息することを願いつつ、来る夏本番を元気に乗り切りたいものだ。