名古屋市の河村たかし市長が、夕刊フジの単独インタビューに応じた。美容外科「高須クリニック」の高須克弥院長が、地元・愛知県の大村秀章知事の解職請求(リコール)運動を始めると発表したことを受け、即座に応援を表明したのだ。名古屋市長と愛知県知事のバトル勃発。前代未聞といえる、助太刀の真意と戦略を聞いた。
「高須氏の、私利私欲のない行動に突き動かされた」「名古屋市民や日本国民の税金や名誉を守るために応援する」
河村氏はこう語った。
高須氏はリコールの理由として、国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」の実行委員会会長としての大村知事への不信感などを挙げた。芸術祭の企画展では、昭和天皇の写真をバーナーで焼き、その灰を足で踏み付けるような映像作品などが公開された。
実行委員会会長代行だった河村氏は、そうした作品が公共施設で、税金を投入して公開されることを知らず、公開後に強く抗議した。全国から批判が寄せられて企画展は一時は公開中止となったが、大村知事は「表現の自由」を盾に再公開を認めたのである。
河村氏は「表現の自由にも限度がある。皇室を敬う、多くの人々の心情はどうなるのか。税金投入が許されるのか。公開の見直しを求めても、大村知事は独裁的で話し合いのテーブルにもつかなかった」と怒りをあらわにした。
芸術祭をめぐり、名古屋市が負担金の一部(約3400万円)の支払いを「留保」していたところ、大村知事が会長を務める実行委員会は先月、名古屋市を提訴した。
河村氏は「市が訴えられるのは、市民が訴えられるのと同じ。この問題では、多くのメディアが真実を伝えていない。アンフェアだ。高須氏のリコール運動を応援する。街頭演説もどんどんやる」と語った。
実は、河村氏はリコールを主導した経験がある。
2009年の市長選で「市民税10%減税」を公約して初当選したが、名古屋市議会が拒否し続けたのだ。河村氏は現職市長としてリコールを進め、11年の住民投票で市議会解散が確定した。
大村知事へのリコールに向けた署名運動は8月にも始まるとされる。
河村氏は「まずは、署名活動を担うボランティアの『受任者』集めが重要だ。名古屋市議会のケースでは、市の100万世帯全戸にお願いの紙を配り、4万人の『受任者』が集まった。今回は、高須氏の周辺に、作家の百田尚樹氏といったスーパー応援団が何人もいて心強い。私も自分のツイッターなどで受任者を集め、署名も呼びかけたい」と語った。
一方、大村知事は2日の記者会見で「(リコールへの)コメントしない。一般論として法に触れない活動は自由だが、事実に基づけなければ誹謗(ひぼう)中傷になる」と指摘している。