「豊岡鞄(かばん)」で知られる兵庫県豊岡市の県鞄工業組合が、新型コロナウイルスの感染拡大で全国的に不足している医療用ガウンの生産を、大阪市の商社「帝人フロンティア」から受注した。鞄製造の縫製技術を生かし、8月末までに80万着をつくる。同組合は「医療現場への社会貢献になり、鞄産地の雇用にもつながる」と話す。
組合には鞄製造関係の64社が加盟。今回は、鞄縫製の技術者や縫製ミシンなどを保有する21社が、1社あたり1万~22万着を分担して生産する。
同組合の由利昇三郎理事長によると、市側から4月中頃、「鞄の技術で医療用ガウンが作れないか」と相談があった。由利理事長ら組合関係者が医療現場を視察し、「鞄技術で対応できる」と判断、今回の大口受注が決まった。
生地の不織布は、帝人フロンティアから支給を受け、組合が裁断や縫製、検品、梱包を担う。不織布は薄くて破れやすいため鞄生産より細い縫製針を使用。糸も4分の1ほどの細さのため、参加事業所は合同研修を行って6月からのフル生産にこぎつけた。完成品は厚生労働省に納める。
由利理事長は「5、6月の鞄受注は前年比8~9割と激減した。鞄に代わる医療用ガウンの生産で組合関係者の約2千人の雇用につながった」と喜び、「豊岡鞄の産地として、品質や安全性には万全を期したい」と力を込めた。