産業医シンコ先生に聞く 続・テレワークに潜む危機
コロナ禍で急増したテレワークに、いまだ順応できていない人がいるかもしれない。多くの顧問先との相談業務をテレワークに切り替えた産業医、シンコ先生(矢島新子)の身にも「テレワークの危機」が再三、降りかかったという。
最初の危機は朝寝坊だ。通勤がなければ、だれもが夜更かしの朝寝坊に陥りやすい。シンコ先生もその一人だった。
「私のメインの仕事がテレワークになって間もない4月上旬のころは、電車などの移動時間がなくなったのをいいことに夜は遅くまでのんびりして、朝は8時ごろまで寝ていました」
しかし、少しずつ体がだるくなってきて規則正しい生活を決意。「通勤時間を節約できるのだからと普段の生活以上に朝は充実させようと思いました」。
いまでは朝は6時半か7時には起床する。自らの生活のリズムが乱れそうになると素早く察知して、軌道修正するところはさすがだ。
次の危機は、テレビ会議などで使うアプリが顧問先の企業によって違ったことだった。
ある日の外資系企業とテレビ会議では、協業アプリ「Teams(チームズ)」が使用された。シンコ先生はTeamsの招待状をクリックし、会議に参加した。慣れればなんでもない仕組みだが、最初のころは当惑したそうだ。
Teamsの使い方に習熟しても、IT企業との会議では、インターネット電話サービス「Skype(スカイプ)」が使われ、ある専門商社の海外駐在員との面談ではビデオ通話アプリ「FaceTime(フェイスタイム)」が採用されている。
この専門商社の面談について「海外駐在員は日本とは異なるハードな環境で激務をこなしています。産業医として駐在員やその家族も含めたメンタルヘルスケアの確認、向上のためFaceTimeによるオンライン面談をしています」。
そのうえで、「企業ごとにシステムが違うのは当然なのですが、ITにそれほど慣れていない私にとっては毎回、『本当にこのシステムでよかったのか』、『きちんとアクセスできるのか』と考えてしまい、ドキドキするものです」
もう一つ、オンライン作業に必須の電子文書の開封作業も、ストレスにつながる危機となった。
「顧問先の企業から送られてきた資料には個人情報もあるため、厳重なセキュリティー・チェックがかかっており、拝見するまでには何度もパスワードを打ち込む必要があります。実はこれは私の苦手な分野。今やあらゆるものにパスワードをかけなくてはいけない時代。すっかり忘れていて再発行することもあります。新たにパスワードを作るにしても、単純な組み合わせだと受け付けられないこともあり、少し面倒です」
テレワークが増えれば、この情報管理は厳しくなるのは必然。
「セキュリティーをかけることは重要なのですが、情報管理の作業はストレスになりますね」
取引先とのテレワークでは、そのたびにセキュリティーの認証が求められ、テレビ会議の場合は、会社ごとに異なる接続アプリにつなげる必要がある。だれもが最初は初心者だ。落ち着いて対応し、慣れていきたいものだ。 (佐々木正志郎)
■矢島新子(やじま・しんこ)
産業医。山野美容芸術短期大客員教授、ドクターズヘルスケア産業医事務所代表。パリ第一大(ソルボンヌ)大学院、東京医科歯科大大学院博士課程修了。医学博士。著書に「ハイスペック女子の憂鬱」(洋泉社)ほか。