【産業医シンコ先生に聞く 続・テレワークに潜む危機】
新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言が延長された。メンタルヘルスの管理などで知られる産業医、シンコ先生(矢島新子)のシリーズ第2弾では、IT弱者の落とし穴に焦点を当てる。
「私も産業医の仕事は基本、テレワーク(在宅勤務)になりました。オンライン会議システムも企業によってZoom(ズーム)やSkype(スカイプ)、Teams(チームズ)を使い分けて、各企業の衛生委員会へのアドバイスや従業員の面談に当たっています」
そこで聞こえてきたのは、テレワーク業務に当たり、Zoomなどの設定がうまくいかないケースが相次いでいることだ。機種の不具合などデバイス側の問題も一部にはあるが、大半は悲しいかな、中高年のIT弱者社員に原因があり、なかなか習得できないようだ。
上司とのオンライン接続を試みているケースなら、その場で解決できないとつい焦ってしまう。「なぜ、自分はうまく接続できないのか」などと自分を責め、ストレスで一気に疲弊する。さらに「イライラ」が募ってきて頭に血が上り、血圧上昇など身体的な症状に至る。「このままだとまずい」と思い悩み、夜眠れないという症状に発展することも。IT弱者はこのような流れで生活習慣病やメンタル不調に陥るパターンが懸念されている。
在宅勤務が長引けば、生活習慣病のリスクもそれだけ増大するという。
「外出自粛で、通勤という身体負荷もなく、また運動もせず、自宅でいつでも食べられるため、食べすぎ飲みすぎで体重が増加している人が増えています。在宅勤務には高血圧や糖尿病という生活習慣病になる悪条件がそろってます」
通常なら初期の生活習慣病は急を要する疾患ではないが、いまは生命の危機に直結しかねない。
「新型コロナウイルスに感染しても軽症で済む人がいる一方で、生活習慣病をもつ人だと重症化や重篤化して、死亡するケースが相次いで報告されています」
どのようなメカニズムで生活習慣病に至るのだろうか。
「ただでさえ外出できずにイライラが募っています。その環境でのテレワーク中に接続不具合などによって強度のストレスがかかると、自律神経のバランスが乱れ、免疫力低下に至ります。ウイルス同様、ストレスも目に見えませんが、大敵です。この影響で生活習慣病の症状につながったり、増悪したりするリスクが上昇します」
IT弱者がストレスをため込まない方法をシンコ先生に挙げてもらった。
□ビデオ電話の接続でてこずっても焦らない
□接続できなければ、ビデオ電話はいったんあきらめ、通話による会議参加とする
□管理職は、IT機器の接続が不得手な人に最初から高い水準を求めない
□サポート会社に連絡できる態勢を整える
在宅勤務の目的は新型コロナへの感染を避けるためなのに、ストレスによる悪循環で体調を崩しては本末転倒だ。
あす以降も「見えない敵」への対処法を。 (佐々木正志郎)
■矢島新子(やじま・しんこ) 産業医。山野美容芸術短期大客員教授、ドクターズヘルスケア産業医事務所代表。パリ第一大(ソルボンヌ)大学院、東京医科歯科大大学院博士課程修了。医学博士。著書に「ハイスペック女子の憂鬱」(洋泉社)ほか。