忍者がスパイとして活躍したテレビドラマの原作は…吉田竜夫の連載マンガ「少年忍者部隊月光」

朝日ソノラマから出ていた単行本
朝日ソノラマから出ていた単行本

 【マンガ探偵局がゆく】

 ときどきかわった依頼がくるが、今回はあえて一つを取り上げてみた。

 「こちらの探偵局では古いテレビ番組のことを調べてもらえる、と聞いて連絡しました。子どもの頃の我が家は大家族で両親と祖父母の他に父の妹弟のうち、まだ学生だった3人が同居していました。一番下の叔父は私が小学校に上がったときまだ中学生で、一人っ子だった私には兄貴のような存在。叔父が好きで私もみていた番組にヘルメットをかぶって刀を背負ったスパイが活躍するのがありました。一緒に映画館でも見た記憶があります。昨年末、その叔父ががんで亡くなり、ふとあの番組のことを思い出しました。ぜひ調べてください」(61歳・会社員)

 マンガ探偵局はあくまでもマンガに関する調査を行うのが仕事だが、今回の依頼はあとで書くようにマンガと関係があるのでお引き受けした。

 依頼人が叔父上とみていた番組は1964年1月からフジテレビ系列で放送された「忍者部隊月光」である。正義と平和を守る「あけぼの機関」に属する忍者部隊が、スパイ任務を帯びて架空の国に潜入したり、悪の組織と戦うという内容。64年の夏には東映が劇場映画も製作した。

 忍者部隊のメンバーは全員、伊賀忍者や甲賀忍者の血を引くという設定で、「戦隊ヒーローもののさきがけ」と呼ぶ人もいる。

 原作になったのは、当時「週刊少年キング」に連載されていたマンガ「少年忍者部隊月光」だ。作者はアニメーションのタツノコプロ創立者でもある吉田竜夫。

 時は太平洋戦争中の1942。連合艦隊の山本五十六司令長官直属のスパイ組織として少年忍者部隊がつくられる。忍者の血を引く少年少女が集められて陸軍中野学校で密かにスパイ教育を受け8人が選ばれる。リーダーの月光をはじめ月影、月形、満月、三日月、月の輪、名月、そしてくノ一の月蝕。相手はアメリカ太平洋艦隊やイギリスのスパイ組織・コマンダーズ。小型潜航艇「甲標的」や海軍の試作戦闘機「震電」を使って敵陣深く潜入し、さまざまな秘術を駆使してミッションを果たす架空戦記マンガだ。

 テレビ版は時代を現代に移し、忍者部隊のメンバーも大人に。キャラクター設定も大きく変わっている。マンガ版をそのまま再現すると、テレビの製作予算をオーバーしたかもしれない。

 ■中野晴行(なかの・はるゆき) 1954年生まれ。フリーライター。京都精華大学マンガ学部客員教授。和歌山大卒業後、銀行勤務を経て編集プロダクションを設立。1993年に『手塚治虫と路地裏のマンガたち』(筑摩書房)で単行本デビュー。『謎のマンガ家・酒井七馬伝』(同)で日本漫画家協会特別賞を受賞。著書多数。

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