「右か左か」ではなく「上か下か」が呼び覚ます社会主義ノスタルジー

韓国で進む「社会主義」政策

お隣の韓国の文在寅大統領は、社会主義経済政策を連発している。文大統領は、映画『パラサイト』にみられる韓国の極端なほどの「貧富の格差」を解決するということを基本政策として登場している。

3年連続で16%以上の最低賃金アップすると公約して、これはさすがにすべてを実現できずに頓挫しているが、労働時間の大幅短縮、法人税増税などを行っている。文大統領の社会主義政策はサムスン電子などを筆頭に資本(企業)サイドには、大幅な人件費増などをもたらす結果となっている。資本サイドは人件費コスト急増から、当然なことに新しい正規雇用には二の足を踏み、それどころか資本の逃避現象を呼び起こしている。

労働組合など守られた既得権を持つ労働者層には恩恵を与えたが、トータルでは若者の失業者を実体上増大させ、中小企業・個人商店の廃業、資本の海外逃避など「ヘルコリア」を増幅している。

「不平等解消を最高の国政目標にしているが、反対も多く、すぐに成果が現れないので歯がゆい」。文大統領は、『パラサイト』のポン・ジュノ監督らとの昼食会で、韓国の「貧富の格差」が解決していないことを認めて「歯がゆい」と嘆いてみせている。韓国が社会主義経済を実行しているのは大変な実験といえる。

だが、文在寅大統領の過去3年にわたる在職は、韓国の「貧富の格差」をなんら解決できないどころか、むしろそれを増大させている。『パラサイト』はその断面を描いており、これこそ「社会主義ノスタルジー」、いや「社会主義シンドローム」といえるかもしれない。

最後に日本だが、160兆円の年金を運用する「年金積立金管理運用独立行政法人」(GPIF)が民間資本の株式を購入している。これは国が民間資本の株主になるということであり、「超」が付きかねない「社会主義ノスタルジー」「社会主義シンドローム」にほかならない。

やってしまったことは後戻りができないし、マーケットへの衝撃面から辞めることもできない。日本の「社会主義ノスタルジー」はガラパゴスといえばガラパゴス系の進展といえるかもしれない。

「グローバリゼーション」は、日本にも「貧富の格差」拡大傾向をもたらしているのは間違いないが、世界のように「貧富の格差」の極大化は避けられている。「貧富の格差」というファクターとの直接的な関係性はまだみられない。GPIFの株式運用は、これはこれで必要があってこうなっているのだろうが、独自な「社会主義ノスタルジー」「社会主義シンドローム」の道を歩んでいる。

日本のケースは、以前から緩やかな社会主義の優等生といえる面があり、それを自覚していないという特徴があるようだ。中国のように共産党独裁体制ではないわけだが、中央官庁が各業界を監督する一種の“社会主義市場経済”が根付いている面がみられる。GPIFの株式運用も自覚したものではないと推定されるが、資本主義としてはかなり異形であるかもしれない。

ちなみにアメリカは各州ベースの年金ファンドはいまでは株式の運用を組み入れている。低金利の国債運用で、利回りが低下しているためだ。

だが、国の二つの年金ファンドは株式運用には頑として手を染めていない。市場流通性のない「特別国債」、すなわち特別財務省証券で運用されている。国の年金ファンドが、かりそめにも民間企業の株式を運用に組み込んで大株主になれば、それこそ“社会主義統制”に映るからである。

アメリカの国の年金ファンドが、株式運用に手を出していないのはアメリカ資本主義の矜持といわなければならない。ただし、先は分からない。というのも、米連邦準備制度理事会(FRB)が、新型コロナウイルスへの緊急経済対策でリーマンショック時と同様にゼロ金利政策を再採用したからだ。

仮にゼロ金利政策が長期に及ぶことにでもなれば、国の年金ファンドは利回り低下から今の年金給付を維持できない苦境に陥る可能性がある。アメリカ資本主義の矜持も風前の灯火になりかねない状況に直面している。「社会主義ノスタルジー」の亡霊たちはそこまで押し寄せているのである。

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