「IMF」の名のもとに消費税増税の印象操作を行う日本メディア 声明をチェックしてわかった財務官僚の不都合な真実

【お金は知っている】

 ワシントンに本部がある国際通貨基金(IMF)といえば、日本国財務省の「ステルス」同然である。気前よくIMFにカネを出してくれる財務官僚の言いなりになるリポートを出すからだ。そのIMFトップのゲオルギエバ専務理事が来日し、来年以降の日本経済に関する審査報告書について25日に記者会見した。

 メディアの報道は、「日本の消費税、2030年には15%に IMFが報告書」(日経電子版)、「日本の消費税率 さらに段階的に引き上げを」(NHK)と、消費税増税一色である。「やれやれ、また日本経済を低迷させる政策の勧めだ」と慨嘆しかけたが「いくら何でもIMFの専門家集団にエリート・エコノミストとしての矜持(きょうじ)はあるはずだ」と思い直した。「2019年対日協議終了にあたっての専務理事声明」をチェックすると、国内の財務省御用メディアがIMFの名のもとに消費税をさらに上げろと騒いでいるだけ、という構図が見えてきた。

 IMF声明は確かに中長期的な消費税率のアップを指摘しているが、当面必要なのはキャッシュレス決済のポイント還元など消費増税ショック緩和策の延長、保育、医療、介護部門の賃金引き上げ、最低賃金引き上げへの政府のコミットメントだと強調している。一律20%のキャピタルゲイン課税(配当や利子も含めた金融所得課税の一部)の税率を22年以降、段階的に30%に引き上げるべきだとし、「富裕税の再導入を検討してもよい」とまで踏み込んでいる。かなりまともな内容ではないか。

 期限は10年後とした消費税率引き上げは、むしろ「急ぐな。他に急いでやるべきことがある」と解釈すべきなのだ。

 なのに、メディアは財務官僚の意のままにさらなる消費税増税に向けた印象操作に協力した。財務官僚は「失敗だ」とぼやくポイント還元を予定通り来年6月に打ち切りたいし、財界や与党から反対が強くて折衝が面倒なキャピタル課税強化や富裕層課税には立ち入りたくない。徴税が楽な消費税さえ増税すればよい、というわけだ。

 財政はどうか。IMF報告は「財政引き締めを回避する必要性を踏まえ、2020年、そしてデータの数値次第では2021年も中立的な財政スタンスを維持すべきだ」と言う。「中立的」とは国民から吸い上げた税を全額国民に返すことで、緊縮財政をやめることを意味する。これまた財務官僚にとって不都合な真実で、メディアは伝えない。IMF報告は「消費者や投資家の心理はここ数年間で最も冷え込んでいる」と警鐘を鳴らしている。それがいかに異常な経済停滞か、グラフが示す通りだ。

 25日には財政制度等審議会が緊縮財政堅持の意見書を発表した。財政審は財務省御用の学者らで構成される。IMFエコノミストの爪のあかでも煎じて飲んだらどうか。(産経新聞特別記者・田村秀男)

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