台風19号で自宅の浸水被害で犠牲になった宮城県角田市の斎藤次郎さん(90)は地元の小学校で校長を務め、「次郎先生」と呼ばれて慕われていた。「温厚で優しい人だった」。知人らはその人柄に思いをはせ、悼んでいる。
斎藤さんは平成元年まで約40年間にわたり教員生活を送り、同市立横倉小では校長を務めた。5年ほど前に病気で妻を亡くしてからは阿武隈川の支流・尾袋川近くの自宅で一人で暮らしていたという。
「人からものを頼まれたら断れない性格。何でも引き受けるので忙しい生活を送っていた」。いとこの目黒正彦さん(72)は振り返る。目黒さんによると、斎藤さんは退職後、地域の行政区長や公民館の館長などを務め、地域住民からは「次郎先生」の愛称で親しまれていたという。
高齢で耳が悪くなっていたという斎藤さん。風雨が強まった12日夜、目黒さんは「被害状況がつかめないのではないか」と心配して何度も連絡を試みた。民生委員も4回ほど斎藤さん宅を訪れ、避難を呼びかけたが、家の中から反応はなかった。14日午前、自宅の居間で倒れているところを発見された。
目黒さんは「いつもニコニコしていて、怒っているところを見たことがない。誰からも慕われるいい人だった。台風の日、自分が斎藤さんを連れて一緒に避難すればよかった」と声を詰まらせた。(塔野岡剛)