生命体としての芸術祭 岡山市中心部で開催

パメラ・ローゼンクランツ「皮膜のプール(オロモム)」2019年
パメラ・ローゼンクランツ「皮膜のプール(オロモム)」2019年

 各地で増殖する芸術祭のうち、やや異質の存在として現代美術ファンを中心に注目されているのが岡山市中心部で開催中の「岡山芸術交流」だ。

 3年ぶり2回目となる今回は、フランス出身で米ニューヨークを拠点に活躍する美術家、ピエール・ユイグ氏をアーティスティックディレクターに迎え、海外9カ国18組の作家が参加している。前回に引き続き、アパレル大手、ストライプインターナショナル(本社・岡山市)の石川康晴社長が総合プロデューサーを務め、2カ月弱の会期で前回(約23万人)を上回る26万人の来場者を見込む。

 タイトルがまず謎めいている。「IF THE SNAKE もし蛇が」。ユイグ氏は同芸術祭を「独立した一つの生命体」と語る。明確なテーマというより、物語のような何かが展覧会全体を包んでいる。

 街の象徴、岡山城にほど近い旧内山下(うちさんげ)小学校をメインに周辺美術館や映画館など会場は散在するが、いずれも移動は徒歩圏。何げない風景に突如アートが差し込まれる。小学校のプールはいかにも人工的なピンクに染まり、夜には水面に宇宙空間を浮遊するカエルの映像が映り込む。いきなり女性の美声が響き渡り、パフォーマンスが始まることも。日常が非日常に変わる。

 生命とテクノロジー。見えるものと見えないもの。時間の概念の広がり。変容し続ける世界…。各作家の作品は独立しながらも、表現内容でゆるやかにつながっている。「ありえない世界を想像するにはフィクションの力が必要。アクセスできないと思っていた向こう側の世界、見えないものにたどり着ける」とユイグ氏は力説する。

 同芸術祭の実行委員会会長を務める大森雅夫・岡山市長は「最初は何だろうと思った作品も、既成概念を打ち破るような作者の意図を聞くと、よく理解できた。多くの方々、特に子供たちに知的興奮を与えてほしい」と語る。ただし、作品を見て回るだけで知的興奮を得られるのは、かなりのアート通だろう。「観客の知性を信じている」とユイグ氏は述べたが、一般の観客にはもう少し、理解の導きとなる仕掛けや工夫が展示の中に必要なのではと感じた。

 一方で対話型鑑賞会や子供向けのアートツアー、タイトルにちなんで神社で蛇について語り合うトークイベントなど、ユニークなプログラムが同芸術祭には用意されている。こうしたきめ細かい取り組みによって、市民や子供たちの創造の芽を育むとしたら、意義ある芸術祭となるだろう。11月24日まで、月曜休(祝日は開場し翌日休)。(黒沢綾子)

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