主張

英EUの新離脱案 議会は承認へ現実判断を

 英国政治の混乱と分断に終止符を打ち、安定と団結へと舵(かじ)を切るべきときである。

 欧州連合(EU)離脱をめぐり、英国とEUが新たな離脱協定案で合意し、EU首脳会議で承認された。

 これ以上の決着の先送りは、双方ともに望ましくない。その認識を共有し、「合意なき離脱」の回避へと歩み寄ったことを評価したい。

 最後の関門が英議会による承認である。離脱案を3度も否決して混乱を深めたメイ前政権時と同じ轍(てつ)を踏んではならない。与野党は現実的な判断をすべきである。

 新離脱案の核心は、アイルランド島にある英領北アイルランドとアイルランドの国境問題だ。

 EUとメイ前政権は昨年、国境管理の復活による混乱を避けるため、英国とEUが新たな自由貿易協定(FTA)を結ぶなどの解決策が図られるまで、英国をEUの関税同盟にとどめる「バックストップ(安全策)」で合意した。

 これでは、離脱してもEUルールに隷属したままとなるので撤回すべきだというのがジョンソン首相の主張だった。今回、EUはこれを認めた。

 その代わりに北アイルランドはEUの単一市場に残す。これまで通りモノの移動は自由で、関税をチェックする事実上の国境は北アイルランドと英本土の間に置かれる。英国内で異なるルールが適用されるという点では、英国とEUの痛み分けといえよう。

 最大の難関だった「安全策」の撤回が実現したことは大きな前進である。ジョンソン政権に閣外協力してきた北アイルランドの民主統一党(DUP)は「英国の一体性を害する」と反対するが、大局的見地に立って判断すべきだ。

 英議会が否決した場合、10月31日の離脱期限までに別の案がまとまらなければ「合意なき離脱」が現実味を帯びる。期限を延長したとしても混乱と不確実性が増大するばかりとなりかねない。英国とEUはもちろん、世界経済全体にも大きな悪影響を及ぼそう。

 新離脱案について、EU側ではユンケル欧州委員長が「延長の必要はない」と語り、英議会の承認を促した。メルケル独首相も「歴史があり、経験と知恵のある議会の判断に期待する」と述べた。

 英議会は、今こそ議会制民主主義の母国としての矜持(きょうじ)をみせなくてはならない。

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