米大リーグのワールドシリーズ(WS)進出をかけたリーグ優勝決定シリーズ(LCS)。今シーズンはヤンキースの田中将大投手がアメリカン・リーグの覇者を決めるLCSに出場する。
リーグ王者の座とWS進出がかかるLCSでは、数々の名勝負が繰り広げられてきたが、日本のファンの記憶に拭くあく刻まれているシーンは、やはり2003年のアメリカンリーグ優勝決定シリーズ(ALCS)だろう。
この年は松井秀喜外野手が、巨人からヤンキースに移籍。ALCSでは、そのヤンキースと宿敵・レッドソックスが激突し、勝負は第7戦までもつれ込んだ。
試合はヤンキースが2-5と3点をリードされた八回、相手エースのペドロ・マルティネス投手から1点を奪って2点差に詰め、さらに松井が右翼線へ痛烈な二塁打を浴びせてチャンスを二、三塁に広げた。この好機でホルヘ・ポサダ捕手が中前に落として、三走に続いて松井が二塁から生還して同点。いつも冷静な松井がホームイン後に両こぶしを握り締めてジャンプ。ペドロを打ち崩した奇跡的な同点劇に、珍しく感情を爆発させた。
後に松井は産経新聞とのインタビュー(2013年)で、「普段は感情の波はあっても表に出さないようにしてきました。僕は、それができる自信もあります。ただあの時だけは何かを越えてしまった。試合の意味の大きさ、展開、(相手投手もエースの)ペドロ・マルチネスだったし、いろいろなものが重なって、感情が爆発してしまったのでしょう」と振り返っている。
なお、この試合は5-5のまま延長戦にもつれ込み、十一回裏に現ヤンキース監督のアーロン・ブーン内野手が、左翼席へ劇的なサヨナラ本塁打を打ち込み、ヤンキースがリーグ優勝を果たした(WSは豪腕、ジョシュ・ベケット投手を擁したマーリンズに2勝4敗で屈した)。
その10年後には、レッドソックスの上原浩治投手が大車輪の活躍を見せた。
タイガースとのALCSで1勝3セーブと、勝ち試合のすべてに白星かセーブを挙げてリーグ優勝に大きく貢献。しかも、防御率は驚異の0.00! 4勝2敗で勝ったこのシリーズのMVPに選ばれた。
レッドソックスはカージナルスとのWSも4勝2敗で制し、最後を締めくくった上原は、雄たけびをあげて歓喜の輪に飛び込んだ。