好天時であれば、センターに運び込まれた汚水と雨水の下水はすべて処理されて川や海に放流される。しかし、台風などで大雨が降ると処理能力が限界を超え、市街地への浸水の恐れも生じることから、汚水が雨水とともに未処理のまま川や海に放流される。
そのため大雨では必然的に海中の大腸菌の数ははね上がる。今回の中止も台風10号の接近に伴う雨とともに汚水が流れ込んだことが要因とみられる。
都などが五輪やパラリンピック期間中を想定した平成30年7~9月に行った水質調査でも、トライアスロンの基準で調査した27日間のうち12日間で基準を超えた。基準は100ミリリットル以下の海水中の大腸菌数を250個以下としているが、3万5千個にまで達する日もあった。
23区の約2割の地域で採用されている汚水・雨水を別の下水道管で流す「分流式」を全地域に広げれば汚水の流入は防げるが、都下水道局の担当者は「単純に下水道管を2倍にしなければならない。地下にさまざまなケーブルや地下鉄が通る都内では、費用的にも時間的にも簡単にできる話ではない」と話す。
■組織委「会場変更の必要なし」
五輪やパラ期間中は台風の接近や「ゲリラ豪雨」の発生も予想され、汚水放出の頻度は高まるとみられている。ただ、それでも組織委は「会場変更の必要はない」との立場を貫く。
組織委などは、テスト大会で設置したスクリーンを3重にする案を考案。テスト大会では海面から1枚のスクリーンを垂らすだけだったが、海面から2重に垂らしたスクリーンの間に、海底から海中にのびるスクリーンをもう1枚設置することで、スクリーンの内と外の水の流れを確保しつつ、大腸菌など不純物の流入を防ごうという考えだ。