【北京=西見由章】中国政府は3日、北京で開いた東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の閣僚会合で、妥結に前向きな姿勢を示した。米国の対中圧力や国内の経済減速など、国内外の厳しい状況に直面する習近平指導部は、米国が参加していないRCEPをまとめ、早期の成果としたい考えだ。
習国家主席は6月に大阪で開かれた20カ国・地域(G20)首脳会議で、RCEPの早期妥結と中国EU投資協定、日中韓自由貿易協定(FTA)の協議加速を宣言し、一連の交渉を強力に進める考えを強調した。「対米貿易戦争の負担を少しでも軽くしたい習指導部が外交成果としても切望している」(北京の経済専門家)ことが背景にある。
ただRCEPをめぐっては、中国の工業製品の大量流入による貿易赤字の拡大を懸念するインドが広範な関税撤廃に後ろ向きだ。妥結を急ぐ中国政府には「タフネゴシエーター」(日中関係筋)のインドなどを外した「ASEANと日中韓3カ国」の枠組みでの貿易協定を模索する動きも出ている。
もっとも、中国自身も総論では妥結を急ぐものの、個別分野の市場開放や、国有企業の規律など構造改革につながる各論のルールづくりをめぐっては慎重だ。胡春華副首相は閣僚会合の開幕式で「発展途上国」と規定する自国を念頭に「参加国の発展の段階によって法律や自治などの国情は異なる」と言及した。