6年の任期が保証された参院議員の選挙だからこそ、中長期の経済問題について腰を据えて論じてほしい。それなのに与野党の論戦は、あまりに表層的に過ぎないか。
緩やかな景気回復といっても実感は乏しい。企業収益の改善に見合うほど賃金は伸びず、消費に勢いはない。こうした認識は与野党共通のはずである。
ところが肝心の処方箋は心もとない。野党は賃金増や暮らしの向上など有権者の受けを狙ったような政策が目立つ。これではアベノミクスの代案とは言えまい。
人口減少が進む中で、いかに成長を果たすかである。生産性向上に資する政策は何か。税制や規制緩和で成長分野をどう育てるか。具体的で実現可能でなければ責任ある政策ではない。与野党ともに銘記すべきことである。
自民党は国政選挙の度にアベノミクスの実績を訴えてきた。今回も雇用などの指標を挙げて成果を示す。野党が批判するように、いたずらにアベノミクスを失敗と断じるのは適切ではなかろう。
ただ、政権の期待ほど経済に力強さがないのも事実だ。物価は思うように上がらず、デフレに戻る懸念がつきまとう。所得や消費が盛り上がる好循環もまだだ。足らざる部分にどう向き合うかを、もっと丁寧に説明すべきである。
立憲民主党や国民民主党は家計所得の引き上げなど暮らしの向上を重点に置く。家計に恩恵を及ぼすため低所得層などを支援する分配政策は、政権が掲げる「成長と分配の好循環」とも重なる。与野党でバラマキを競い合うのか。
例えば政権が1千円への引き上げを目指す最低賃金について、立憲民主は1300円、共産党は1500円にするという。民主党政権時代を想起させるように、立憲民主と国民民主は戸別所得補償制度で農家所得を底上げし、国民民主は児童手当を増額するというが、バラマキ批判を浴びた当時の教訓を忘れてはならない。
日本維新の会は規制緩和による経済成長などを掲げた。潜在成長力を高めるため、どう具体化するかをきめ細かく論じてほしい。
海外経済は米中摩擦でリスクが高まっている。消費税率10%への引き上げも予定される。これらを乗り越えるためにも、経済を底上げする実効性ある方策が問われているのだ。その点を冷静に見極めることが肝要である。