主張

米国の武器売却 台湾存立に当然の措置だ

 トランプ米政権が台湾に対する総額22億ドル(2400億円)相当の武器売却を決めた。中国政府は関連の米国企業に対する制裁を表明するなど、反発を強めている。

 中台の軍事バランスは通常兵器に限っても中国に傾いている。台湾海峡の安定と平和を保ち、台湾の自由と民主主義を守るうえで、米政府の売却決定は当然である。

 売却は台湾の安全への関与を定めた米国の台湾関係法に基づく。今回は戦車や携帯式地対空ミサイルなどが対象だ。台湾が望む新型のF16V戦闘機の売却は今後の課題となる。

 米政府は6月に発表したインド太平洋戦略で、台湾への支援継続を強調した。米海軍は今年に入り台湾海峡へ頻繁に艦艇を派遣してきた。今回の売却を含む米国の関与強化は望ましいことだ。

 中国外務省の報道官は、売却に「強烈な不満と断固たる反対」を表明した。だが、軍事力をひたすら増強し、台湾海峡の安定と地域の安全を脅かしてきたのは中国の方ではないか。

 中国の戦闘機は今年3月、中台の実質的な停戦ラインである台湾海峡の中間線を越え、台湾側空域に侵入した。6月には、沖縄本島と宮古島の間を通過した空母「遼寧」などの艦隊が、台湾を周回航行した。台湾と米国への威嚇行為である。沖縄の先島諸島の目と鼻の先の出来事であり、日本の安全保障にも深く関わってくる。

 中国は「平和統一」の看板を掲げているが、習近平国家主席の就任後、台湾への軍事、外交上の圧力をますます強めている。魏鳳和中国国防相は6月2日、アジア安全保障会議で「誰かが台湾分裂を図るなら、犠牲を惜しまず戦い抜く」と述べた。

 中国の威圧には、総統選挙を来年1月に控えた台湾の政局に影響を与える狙いもあろう。だが中国が独立派とみなす蔡英文総統は、中国の強硬姿勢への反発を追い風にむしろ支持を広げている。

 台湾の有権者は、中国の圧迫が強まる香港情勢も注視している。「一国二制度」の結果が香港の現状である限り、台湾がこれを受け入れることはあるまい。

 台湾向け武器売却を非難する前に、中国は、急増させてきた国防費を抑制するなど緊張緩和に踏み出すべきだ。それなくして対中警戒を緩めることはできない。

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