人気漫画などの海賊版サイト「漫画村」の元運営者らが著作権法違反容疑で逮捕された。
インターネット上でタダ読みされることによる出版社や作者らの被害は甚大である。創作の対価を奪う泥棒行為に等しいとの厳しい認識を新たに対策を取りたい。
サイトの運営・管理を主導したとみられる男がフィリピンで拘束され、福岡県警などが逮捕状を取った。逮捕容疑は集英社の人気漫画「ONE PIECE(ワンピース)」の画像ファイルをネット上に無断で公開し、同社の著作権を侵害した疑いだ。
「漫画村」は昨年4月に閉鎖されたが、画像が鮮明で最新刊が出版から間を置かずに掲載されていた。一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構によると、このサイトだけで平成29年秋から約半年間に延べ6億人超が閲覧した。1人1冊読んだとして被害額は3千億円以上だと試算されていた。
海賊版サイトに対し、出版社などは個別に削除要請などを行っているが限界がある。類似サイトの開設、閉鎖を繰り返し、いたちごっこが続く。海外サーバーを経由するなどして運営者を突き止めにくいとされるが、徹底した捜査による解明は類似サイトの抑止にもつながるはずだ。
海賊版サイトはアクセス数によって広告で利益を得ている。その額も多額である。捜査、公判を通し、手口など全容解明を進めてもらいたい。広告を扱う業者も、犯罪行為に加担していると認識すべきだ。
10代、20代の若者が海賊版サイトを利用するケースも多い。著作権侵害という明らかな違法行為に対し、利用者を含めた認識はなお甘くないか。
ネット上からの違法ダウンロードの対象を、現行の映画や音楽だけでなく、漫画など静止画を含む全著作物に広げる著作権法改正に対し、「ネット利用を萎縮させる」などの反対が出て、見送られた経緯もある。
だが、違法なものを使う方が問題ではないか。創作で得られたはずの収入が海賊版によって奪われれば、作者らの生活が脅かされ次の創作の芽を摘む。
先に挙げた著作権法改正は、海賊版を安易に利用しないよう認識を共有する上でも意義が大きい。文化の泥棒を許さぬ必要な手立てをためらってはならない。