相次ぐ不適切な保険販売に開いた口がふさがらない。日本郵政傘下のかんぽ生命保険で、保険を乗り換えた顧客に対して新旧保険料を故意に半年以上、二重払いさせていた件数が約2万2千件あることが発覚した。
同社では6月、これとは別に、顧客の不利益となる多数の契約を結んでいたことも明らかになった。営業成績ばかりを優先する意識が蔓延(まんえん)していたのではないか。信頼をここまで裏切った責任は重い。
不利益を強いられた契約者の救済はもちろん、過去の契約を総点検し、早急に原因を究明しなければならない。その上で万全の再発防止策を講じるべきである。
金融庁にも、行政処分の検討を含む厳正な対処を求めたい。
平成28年4月~30年12月の契約で見つかった。他期間も含むとさらに増える可能性がある。新契約加入から旧契約解約までの期間が半年以上になると、乗り換えではなく新規扱いとなり郵便局員らの手当金が増える。これを目当てに解約を先延ばしさせた可能性があり、悪質と言わざるを得ない。
すでに判明した別の問題は、乗り換えの際、健康状態の悪化を理由に新たな契約が結べず無保険状態に陥ったり、既存契約の特約で対応できるのに契約自体を変更させられたりしたものだ。過剰な営業ノルマで顧客保護がないがしろになったのではないか。
同社はこれらを深刻に受け止めなければならない。最初に発覚した際には、わずかな調査だったのに「法令違反はなく、不適切なものはない」としていた。だが、その後も問題が続いた。後手の対応では信頼回復もおぼつかない。
顧客本位の営業や規範意識を徹底すべきはもちろん、契約の仕組みを一から見直すなどの抜本的な対応を明確にすべきである。
忘れてはならないのは、ゆうちょ銀行でも最近、高齢者向けの投資信託販売で勧誘時の健康確認を怠るなど、社内ルールに反する手続きが多数見つかったことだ。かんぽと同様、再発を防ぐ社内体制の再構築を急がねばならない。
両社とも親会社の日本郵政の株式保有を通じて国の関与が残り、それが顧客の信用につながっている。民営化の進展に伴う収益基盤の強化を急ぐあまり、強引な営業がまかり通るようでは元も子もない。グループ全体の問題として厳しく対処することが重要だ。