イランが7日以降、米欧などと結んだ核合意に反してウラン濃縮度を高めると警告した。低濃縮ウランの貯蔵量が合意の規定を超えたことも明らかにした。
核合意は、イランの核開発能力を排除するものではなく、トランプ米大統領のいうように欠陥は多い。だが、同国の当面の核開発の進展を防ぎ、中東の核開発競争に歯止めをかける意義がある。代替のないまま、崩壊させるわけにはいかない。
合意から離脱した米国による制裁強化の圧力を受け、イランは状況改善のための措置を欧州に求めている。その期限が7日であり、合意違反やその警告は欧州を動かすための手段である。
イランは一貫して、核合意を維持すると表明してきた。合意崩壊につながる違反を交渉の駆け引きに使うのはおかしい。国際社会の理解は得にくいだろう。
イランがこのまま、核開発再開を本格化させることは絶対に認められない。合意の崩壊回避を第一に考えなければならない。
安倍晋三首相は先月中旬、イランを訪れ、最高指導者のハメネイ師やロウハニ大統領と会談した。説得の先頭に立ってほしい。
核合意に絡むもう一つの懸念は、米国とイランの緊張が極度に高まっていることだ。濃縮度を高めるとの警告に対し、トランプ氏は報復を示唆した。
イランは先月、米無人偵察機が領空に侵入したとして撃墜した。これを受け、米国が報復攻撃寸前にあったことは、トランプ氏自身が明らかにしている。
日本などのタンカーがホルムズ海峡付近で攻撃された事件でも、イランの関与を強く主張する米国にイランは猛反発している。
米、イランは1979年のイラン革命とその後の米大使館人質事件を受け断交して以来、40年に及ぶ確執の歴史を持つ。一触即発の事態と認識すべきだ。
核合意を離脱した米国は、イランに核開発を断念させ、核拡散を防ぐための新たな展望を示し、イランと新たな合意に向け、交渉に入る必要がある。
だが、今は、両国が話し合いの場につく雰囲気ではない。米、イランの緊張緩和も一朝一夕にはならないだろう。日本はそれを見越して、粘り強い仲介外交に当たらねばならない。まずは、合意の崩壊回避に全力を挙げるべきだ。