トランプ米大統領の訪日に合わせて日本に戻った際、テレビでトランプ政治に関する討論番組などを見ていて、珍妙な言説に遭遇することが時々あった。
例えば、米中の「貿易戦争」や北朝鮮に対する非核化要求など、全ての主要政策を「来年の大統領選での再選のためのパフォーマンス」などと十把一からげで選挙と結びつけて論じる皮相な分析だ。
あるいは、マティス国防長官が昨年末に辞任して以降は「トランプ氏の周辺にはイエスマンしかいない」と断じる記者や有識者が、北朝鮮やイランの核問題では「政権内部が強硬派と穏健派で割れている」と矛盾した指摘をする。
大統領の最終的な政策決定に閣僚や高官が従うのは当然であって、それをもって「イエスマンばかり」というのは適当でない。
一方、政権内部の「意見対立」に関してであるが、こうした批判をする方々に限って、オバマ前大統領がリンカーン元大統領にならって立場や主張の異なる人物をあえて登用した、との逸話を好意的に評価していたりするから不思議だ。
逆に言えば、この程度のことをもっともらしく語れれば「トランプ氏に詳しい専門家」として通用するのだから、「トランプ評論家」は気楽な稼業だ、と言ってしまうのは嫌みが過ぎるだろうか。(黒瀬悦成)