今年の春以降、消費者の生活に密着した商品での値上げが相次いでいる。4月の物価上昇率は価格変動が大きい生鮮食品とエネルギーを除いたベースでみると、2年10カ月ぶりの高さだった。ただ、専門家の間では物価上昇の勢いが今後も続くとの見方は少ない。春の値上げラッシュはすでに一巡し、今後は携帯電話料金の値下げも見込まれるからだ。物価上昇は企業の収益増や賃上げにつながる好循環の出発点である可能性もあり、値上げの春の息切れは物価上昇率2%を目指す日本銀行には逆風。ただしそもそも賃上げ機運に乏しい日本経済の現状をみれば、消費者にとってはやはり朗報ともいえる。
値上げ効果じわり
ダブルチーズバーガーが10円値上げ、ヨーグルトも10円値上げ、サバ缶は20円値上げ-。
今年の春以降、こんなニュースを目にする機会が増えてきた。都内の会社員の男性は「ランチでよく食べるカレーが千円超えになった。毎月の小遣いのことを考えると、ちょっとショック」と話す。
多くの企業が値上げに踏み切った背景には、小麦粉や生乳といった食品の原材料の価格上昇や、人手不足が深刻な運送業界の人件費引き上げで物流コストが上がっていることなどがある。6月1日から即席カップ麺「赤いきつねうどん」などの希望小売価格を5~8%値上げした東洋水産は「生産・供給コストは引き続き上昇するものと予想される」と値上げの理由を説明している。
値上げの春は政府の経済統計にも表れた。総務省が5月24日に発表した4月の全国の消費者物価指数の伸び率は全品目の水準を示す総合指数で、前年同月比0・9%となり6カ月ぶりの高さだった。さらに価格変動が大きい生鮮食品とエネルギーを除いて算出される指数(コアコア)では0・6%となり、平成28年6月(0・7%)以来の高さとなっている。コアコアは29年3月にはマイナス0・1%をつけていたことを考えれば、値上げの流れはじわじわと強まっているようにもみえる。