主張

高齢者の暴走事故 社会守る抜本対策を急げ

 福岡市早良区の交差点に車が突入し、運転していた81歳の男性と、同乗していた76歳の妻が死亡した。車は約600メートル手前から、対向車線を猛スピードで逆走した。歩行者ら7人も巻き添えで負傷した。

 またも高齢ドライバーによる深刻な交通事故である。4月には東京・池袋で88歳男性の暴走運転で3歳女児と母親が犠牲になった。

 重大事故が起きる度に運転免許の定年制や強制返納制度の必要性を論じる。だが、対策は進まぬままに次の事故が起きる。いつまで同じことを繰り返すのか。

 平成29年に施行された改正道路交通法により、75歳以上は3年ごとの免許更新時に認知機能検査を受け、認知症の恐れがあると判断された場合は医師の診断が義務化された。認知症と診断されれば免許取り消しの処分となる。

 だが、高齢者の事故原因は認知症だけではない。悲しいかな人は老いる。運動神経も反射神経も判断力も衰える。これらの全てが事故の要因となり得る。

 警察庁や自治体は公共交通機関の運賃割引が受けられるなどの特典を付して免許の自主返納を呼びかけている。返納者は年を追うごとに増えており、池袋の事故後には一時的に急増した。一方で、75歳以上の免許保有者は年々増加している。自主返納任せの対策は現実に追いついていない。

 福岡の事故の男性も周囲に自主返納の相談を持ちかけていたという。だが間に合わぬまま、自らと妻の命を落とす結果となった。

 内閣府の調査によれば、80歳以上の4人に1人が車を運転しており、このうち6割近くは、ほぼ毎日運転している。運転を続ける理由はさまざまであり、継続して運転しているほど自主返納への関心は薄い。家族の説得にも応じない高齢者も多い。

 政府の未来投資会議は昨年、65歳以上の雇用拡大に伴い、高齢者向けに自動ブレーキなどを備えたアシスト車限定免許の創設を打ち出した。東京都はブレーキとアクセルの踏み間違いによる急発進を防ぐ装置の購入費を一部補助する方針を打ち出した。事故防止に役立つなら急ぐべきだ。

 同時に社会の安全を守るため、高齢者自身を守るため、年齢の上限を設ける免許の定年制や強制返納の仕組みは不可欠だ。これは喫緊の課題である。

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