東京電力福島第1原発で20日から始まる予定だった1・2号機の共用排気筒(高さ約120メートル)の解体作業が、東電の「単純ミス」で開始できない状態となっている。原因は、排気筒の上まで解体装置をつり上げる大型クレーンのワイヤの設定ミス。事故時に原子炉格納容器を守るため行ったベント(排気)により排気筒内部は放射性物質で汚染され、支柱には破断も見つかっている。早期の作業が望まれるなかでの失策に、原子力規制庁は厳しい目を注いでいる。(社会部編集委員 鵜野光博)
直前だった「確認」
「図面で合っていたものが現場でズレがあるのは珍しくないが、現場にクレーンが来たのが(作業直前の)9日だったのは驚いた。もっと早く確認できたのではないか」
東電から事態の報告を受けた規制庁の担当者はこう首をひねり、「建屋の雨水流入対策工事は、クレーンをどかさないとできない部分もある」と、解体作業の早期開始を求めた。
排気筒の解体作業について東電は、事前に遠隔操作の実証実験を行うなどして半年以上かけて準備してきた。クレーンでつり上げた解体装置で排気筒を最頂部から2~4メートル単位で輪切りにしていき、約半年かけて半分の高さにする計画だった。
しかし、クレーン搬入から2日後の11日、解体装置を最頂部に設置できるかどうか確認したところ、計画していた高さより約3メートル低い位置までしかつり上げられないことが判明した。
当初はクレーンのアームの角度が原因とみられていたが、23日の会見で東電は、(1)設定ミスでワイヤー先端のフックが計画より約4メートル低くなった(2)排気筒の高さを約1メートル高く見積もっていた-と説明。このため差し引き約3メートルの差異が生じたと明らかにした。