旧優生保護法(昭和23年~平成8年)下の不妊手術をめぐり、28日の仙台地裁判決は被害救済の措置を取らなかった政府や国会の違法性を否定し、賠償も否定した。国は司法判断に先行させる形で今年4月に救済法を成立させ、知的障害を理由に不妊手術を強いられた被害者への一時金320万円の一律支給を決めたが、支給対象者の申請、支給決定の数は伸び悩んでいる。
厚生労働省によると、今月26日までの申請は31都道府県で129件、支給決定は北海道と宮城県の女性5人にとどまる。申請は被害者本人のみ可能で、国は手術記録が残っていても周囲に知られたくない人はいるとして、個別には通知しない方針を示してきた。
だが、本人が対象と気づかず、手術の経緯を知る親族らが死亡したケースでは、救済が行き届かない可能性もある。被害者側は、手術記録が残っている人にはプライバシーに配慮しながら個別に通知することなどを求めている。
また、一時金の対象者とされる約2万5千人のうち個人が特定できる記録は約3千人分。記録がない人は、夏ごろに設置される「認定審査会」が医師の所見などを総合して支給対象になるかを判断することになるが、救済が行き届くかは未知数だ。
一方、一連の訴訟で原告1人当たりの請求額は1千万円台~3千万円台。一時金との隔たりは大きく、被害者らの戸惑いは根深い。今回の判決では賠償も認められなかった。
原告側の新里宏二弁護団長は「全く予期しない判決。当事者の方と相談して控訴したい」と話した。