映画深層

「シスターフッド」虚実ない交ぜで描く現代の女性の生き方

【映画深層】「シスターフッド」虚実ない交ぜで描く現代の女性の生き方
【映画深層】「シスターフッド」虚実ない交ぜで描く現代の女性の生き方
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 ドキュメンタリーとフィクションの融合とはいっても、ここまで溶け合っている作品は珍しいのではないか。3月1日公開の「シスターフッド」は、現代の若い女性の生き方をテーマに、どこまでが実録でどこからが創作か判然としない画期的な作りになっている。両分野に携わってきた西原孝至(たかし)監督(35)は「僕自身、それほど分けて考えてはいない。あまり気にしないで単純に映画として見てもらえたら」とアピールする。

生きづらさ

 「シスターフッド」には2人の女性が主役として登場する。兎丸愛美(うさまる・まなみ)は、平成26年に「ヌードモデル」としてデビュー。写真集のほか、自ら写真を撮ったり、舞台女優をこなしたりもしている。一方のBOMI(ボーミ)は、24年にデビューをしたシンガー・ソングライターで、ロックフェス出演に映画の主題歌と幅広く活躍している。

 映画は、この2人へのインタビューやそれぞれの活動を収めた映像を中心に構成されているが、彼女たちの生き方や思いに迫るドキュメンタリー映画の監督として池田悠斗という男性が出演する。2人にカメラを向ける池田監督は、一方で自らも雑誌などの取材を受け、過去の作品について「つまらなかったです」といった辛辣(しんらつ)な言葉を投げられるが、実は俳優の岩瀬亮(りょう)が演じる創作上の人物なのだ。

 「池田という人物を出して、作品を貫く存在として線を一本通そうと思った」と説明する西原監督によると、当初は純粋なドキュメンタリーとして企画していた。今の東京は若い女性が暮らしていくには生きづらい街ではないかと感じ、そんな思いをしている女性たちを見つめる作品を考えた。

 27年からリサーチを進める中で兎丸とBOMIの2人の存在を知り、彼女たちの姿を映像に収めているうちに、女性たちが性的被害を訴える「#MeToo(ミートゥー)」運動が世界規模で起きた。一人一人がどう生きていけば幸せになるのかを映画で問いかけたいと思い始め、昨年になってからフィクションの部分を撮り足して完成させたのがこの作品だった。

皮と肉の間

 兎丸には、フィクション部分でも兎丸自身の役を演じてもらった。彼女の友人の大学生役として出演する女優の遠藤新菜(にいな)には、実際の友人でモデルのSUMIREと素のままで語ってもらい、と虚実入り交じる複雑な構造に仕上がった。

 「真の芸は虚構と事実の間の微妙なところにある」という近松門左衛門の演劇論「虚実皮膜論(きょじつひまくろん)」を地でいくようだが、「確かに僕自身、虚実の垣根の部分にひかれるところがあって、そこに映画の可能性を強く感じる」と西原監督は打ち明ける。

 「兎丸さんは、もしかしたら自分自身を演じているかもしれないし、岩瀬さんは、池田役として撮っているものの俳優の岩瀬さん本人でもある。そこを見つめていくと、人間の本質というか、その人自身が見えてくるような気がする。今までやってきた方法論やチャレンジしたいことを全部詰め込んだような映画になっていると思います」

 富山で育ち、高校までは野球少年だった。一方でレンタルビデオが出始めたころで、「恋する惑星」(1994年)や「トレインスポッティング」(96年)といった東京の単館系で話題になった映画を見て、東京にはこんなかっこいい文化があるんだと憧れた。

 上京して専門学校で映像を学びながら、仲間内で短編を自主製作するうちに映画作りの魅力にはまる。25歳のころ、もう一度勉強したいとテレビの制作会社に入社。ドキュメンタリーやバラエティーなどテレビ番組に携わるようになり、5年後にフリーになってからも「情熱大陸」といったテレビの仕事をこなしつつ、幅広く映画を作ってきた。

時間の芸術

 「テーマや題材によって手法を変えるというところはあるかもしれない。自分のやりたいことが見つかったときに、フィクションかドキュメンタリー、どちらかの手法で表現しているという感じでしょうか」

 これからもテーマに合わせて柔軟にスタイルを決めていくつもりだが、ようやく最近、一つの方向性が見えてきた。それは社会の中心にいない人たちに光を当てたいというものだ。

 「簡単に言えばマイノリティーということだが、そういった人たちの側に立って作品を作りたい。例えば性的少数者(LGBT)の人だったり、報われない社会運動をやっている人だったり、障害を持っている人だったり。そんな人たちがどういう思いをしているかを、映画という表現を通して伝えられたらという思いがあります」

 テレビの仕事も続けていくが、映画には映画ならではの魅力を感じている。

 「映画って時間の芸術だと思う。この映画も4年間かけて作ってきたし、10年後でも20年後でも、いろんな人と出合ってもらえる可能性がある。それがすごく魅力ですね」

(文化部 藤井克郎)

 西原孝至(にしはら・たかし) 昭和58年、富山県生まれ。地元の高校を卒業後、早稲田大学川口芸術学校で映像を学ぶ。同大学文学部に編入し、同大学院に進むも中退。平成23年に初長編映画「青の光線」を監督。「Starting Over」(26年)は、東京国際映画祭など国内外の映画祭に招待されて評判を得る。一方、「わたしの自由について~SEALDs 2015~」(28年)、「もうろうをいきる」(29年)と相次いでドキュメンタリー映画を発表。前者は北米最大規模のドキュメンタリー映画の祭典、HotDocs(カナダ・トロント)に出品され、話題を呼んだ。

 「シスターフッド」は3月1日、アップリンク渋谷(東京都渋谷区)で公開されるほか、全国順次公開。

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