主張

米政府機関閉鎖 妥協案に野党も耳傾けよ

 トランプ米大統領の公約であるメキシコ国境の「壁」建設をめぐる与野党対立で、連邦政府機関が閉鎖されて22日で1カ月となる。

 80万人の政府職員が無給・一時帰休を余儀なくされ、経済政策運営や国土安全など広範囲に悪影響が出ている。

 この異常事態を打開しようと、トランプ氏は19日、57億ドル(約6200億円)の「壁」建設に加え、不法移民の親とともに入国した若者の救済策(DACA)を3年間延長する案を盛り込んだ国境安全策を提案した。

 双方が冷静に対話の糸口を探るべき重大局面である。ところが、民主党のペロシ下院議長は、トランプ氏の演説に先だって提案は受け入れられぬ、と拒否してしまった。全く理解に苦しむ。

 案の定、トランプ氏は反発し、ペロシ氏のかたくなな態度は、ホワイトハウスとの対立で火に油を注ぐだけに終わったようだ。

 今回のトランプ氏の提案は現実的な妥協案といってもいい。「壁」建設も、既存のフェンスや自然の障害で守られていない国境を、コンクリートではなく鋼鉄製の柵で重点整備するものだ。

 加えて、人道支援に8億ドル、麻薬捜査の新技術に8億500万ドル、国境警備職員の2750人増強も盛り込んだ包括案である。

 国境安全強化は民主党を含め歴代政権の懸案のはずだ。それでも、ペロシ氏が提案に乗らなかったのは、DACAの若者らの「恒久的な問題解決」という自らの主張にこだわったからでもある。

 DACAはオバマ前政権が2012年、70万人の強制送還を2年間免除した措置だ。保守層に異論が強く、トランプ氏も撤廃を公約した。トランプ氏はDACAに関しても譲歩をみせたといえ、ペロシ氏は耳を傾けるべきだった。

 閉鎖で「国民を人質にとった」というトランプ批判は、今度は民主党にも向けられよう。

 膠着(こうちゃく)が続く間に商務省の経済統計の集計に遅れが生じたほか、空港の安全検査などに携わる国土安全保障省、貿易交渉を担う通商代表部(USTR)の職員不在は、テロ対策や外交にもかかわる。

 国際情勢が混迷を深める中、超大国の政治指導者が自ら政治信条に固執するあまり現実を見失えば、そのつけは同盟国にも及ぶだろう。トランプ氏、ペロシ氏双方に頭を冷やせと言いたい。

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