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天覧相撲で組まれた大熱戦…貴景勝と阿武咲にも看板カードとしての成長を期待

 ■1月21日 平成最後となった初場所中日の天覧相撲。国民的な期待を一身に背負った横綱稀勢の里が土俵を去り、横綱鶴竜、大関栃ノ心、さらに序盤を沸かせた小結御嶽海まで休場して役者の数には不足があった。しかし、独特の雰囲気の中で世代交代の波に乗った若手の元気あふれる相撲で満員のお客さんもさぞ満足したろう。

 特に、22歳の同学年で次代を背負う貴景勝-阿武咲の一番は番付で見れば当たるかどうか微妙だが、審判部が天覧相撲のために好調同士をあえてぶつけたようだ。杓子(しゃくし)定規に決めていくのではなく、世代交代という時代を反映し、ファンの気持ちに寄り添った取組編成には好感がもてる。

 思い出すのは昭和50年中日の天覧相撲だ。激しい突っ張り合いで昭和天皇のお気に入りだった麒麟児-富士桜が目玉として組まれた。期待にたがわず双方50発を超す激しい突っ張り合いで富士桜は口の中を切って出血し、最後は下がりながら上手に手がかかった麒麟児が上手投げで勝った。昭和天皇は身を乗り出し、いつまでも拍手を送られた。

 富士桜は脂の乗りきった27歳。麒麟児は昭和28年生まれで北の湖、2代目若乃花らとともに花のニッパチと呼ばれた22歳の若武者だった。当時を知る古い親方はいう。「あの激しい突っ張り合いは猛稽古があってこそ。いまの力士はあそこまで突ききれないし、自分の技をお客さんにいかに見せようかという気概も足りない」。

 やがて主役となる新世代が麒麟児-富士桜のような後世に語りつがれる魂のこもった相撲を、いかに見せられるか。同じ突き押しの貴景勝-阿武咲。次の御代の天覧相撲での看板カードとして成長してほしい。 (今村忠)