芥川賞「1R1分34秒」身体と言葉にこだわり 町屋良平さん

芥川賞に決まり、会見で喜びを語る町屋良平氏=16日午後、東京都千代田区の帝国ホテル(飯田英男撮影)
芥川賞に決まり、会見で喜びを語る町屋良平氏=16日午後、東京都千代田区の帝国ホテル(飯田英男撮影)

2回目の候補で芥川賞を射止めた。アマチュアボクシングを題材にしたデビュー作以来、身体の運動と言葉との関係にこだわってきた。受賞作「1R1分34秒」はプロボクサーが主人公。「自分もプロの作家になったので、プロとして書けることがボクシングの中に見つけられるのではないかという動機はあった」

これをすれば勝てたかもしれない練習。当たったかもしれないパンチ。映像で負けた試合を追体験し、あり得た自分の姿を考えて苦しむ主人公。そうした「時差」を引き受ける覚悟を持つことで、主人公は連続する未来へのビジョンを得てゆく。多大な時間と努力の積み重ねの揚げ句、あっけなく勝敗が決まってしまう歯がゆさが、タイトルの数字には込められている。

自身も社会人になって7、8年、ボクシング・ジムに通った。「ボクシングに限らず、体を動かすことと小説を書くことは、自分の中で親しい感覚はある」という。

子供の頃、さくらももこさんのエッセー「もものかんづめ」を読み、自分も何か書けるのではという気持ちになった。影響を受けた作品としては、20代後半で読んだヴァージニア・ウルフの「灯台へ」を挙げる。

高校卒業後、2年間はフリーター生活を送り、現在は営業で外回りをする会社員だ。執筆は夜8時から11時半くらいまでを充てる。執筆を維持する上で体調を崩さないことが「最低限かつ最大の目標」だ。

「書いているときは快楽がある。終わると(これでよかったのかという)苦しい感覚が強くなってくるというのが、今の偽らざる実感です」(永井優子)

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