【銀行マンたちの新天地】
異例の3年間にわたり金融庁長官を務めた森信親(のぶちか)氏が退任し、監督局長だった遠藤俊英氏が新長官となった。
強い指導力で知られた森氏が去ったことで「これで金融庁からの風圧が和らぐ」と安心している銀行幹部もいるようだが、実態はそんなに甘くない。銀行業界への政府当局の圧力は強まることはあっても弱くなることはほぼあり得ない。「金融効率化」すなわち再編への誘導は不変だろう。
検査や指導の重点を、銀行のバランスシート(貸借対照表)よりも経営や戦略にシフトした「森路線」は大枠で変えようがない。仮にゆるめればゾンビ銀行や幽霊信用金庫・信用組合を増やすことになり、国民経済的に許されない。
また、程度の差こそあれ、銀行対当局の関係は手心を加えようがないほど銀行側が追い詰められている。さらに、中国発か米国発かは分からないが、金融バブルの崩壊が近いと噂されるなか、弱い銀行や信金・信組を延命する余裕が国、地域いわんや業界にはない。
そして、「風が弱まる」と期待しているのは弱い銀行や信金の幹部だけであり、第三者の私から見ても「願望」に過ぎない。金融庁以外の官庁でも、複数の幹部が「金融庁長官が替わっても指導方針は同じ」という見方をしている。
銀行、信金・信組はお上の人事に一喜一憂する暇があれば、自らの足元を固め、未来に向けた戦略や布陣を整えることを勧める。