日銀が大規模金融緩和の副作用対策に着手するのは、2%の物価目標実現に向けて現行の超低金利政策の長期化が避けられないためだ。ただ、金融機関や国債市場などへの悪影響を低減する一方で、円高や株安を招いて市場に混乱をもたらすリスクもある。
先週、大規模な国債購入を進めてきた日銀が手綱を一部緩めるとの観測から国債の取引が一気に活発化し、26日には新発10年債の利回りが約1年ぶりに0.1%台に上がった。日銀は27日の指し値オペで、買い入れる10年債の利回りをこれまでより0.01%低い0.100%に指定。指定利回りは日銀が設ける金利上昇の防衛線で、引き下げは上昇観測に対する強烈な牽制(けんせい)を意味する。
「金利目標を柔軟化する第一歩ではないか」。第一生命経済研究所の藤代宏一主任エコノミストはこう指摘し、今回の日銀の対応は取引の活性化に向け、指定利回りを柔軟に上下するための布石とみる。2%の物価目標を実現する道筋は不透明になっており、金融緩和による景気刺激を継続せざるを得ない。日銀は国債買い入れなどを通じて金融市場をコントロールしているが、長期戦を見据えて金融業界からは収益悪化懸念の声も高まっている。