「私は無実無罪でございます。検察側の主張は架空の事実で、証拠は捏造(ねつぞう)です。非常に腹立たしい」-。昨年3月、千葉県松戸市立六実(むつみ)第二小3年のレェ・ティ・ニャット・リンさん=当時(9)、ベトナム国籍=が殺害された事件の裁判員裁判で、死刑を求刑された元同小保護者会長の渋谷恭正被告(47)は表情を変えることなく、逆に捜査当局による捜査の非を訴えた。
渋谷被告は黒のジャージーに迷彩柄のズボンという4日の初公判と同じ服装で出廷。審理の最後に発言の機会を与えられると改めて潔白を主張し、「(起訴勾留中に受けたレーザー治療で右目を失明して)目が見えず、狭心症も悪化し、生活に苦しんでいます」と自身の窮状を訴えた。
検察側が、登校中に連れ去られ、殺害されるまでに受けたとされるリンさんの被害を説明すると、ついたてを挟んで傍聴していたリンさんの母親、グエン・ティ・グエンさん(31)のむせび泣く声が響き、傍聴席では目をハンカチで覆う人の姿も。
「人間性の欠片も見つけられない」「被告を死刑に処するのが相当」。論告求刑での検察側の厳しい言葉にも渋谷被告が表情を変えることはなく、じっと前を見詰めてその主張を聞いていた。(橘川玲奈)