「助けて」「刃物を持っている」-。東海道新幹線の車内で9日夜、男による殺傷事件が起き、現場となった車両から逃れようとする人々で車内は一時、パニック状態になった。過去にも乗客が巻き込まれる事件が発生した新幹線。「むしゃくしゃしてやった。誰でもよかった」。神奈川県警によると、逮捕された男は無差別の犯行だったと供述しているという。
事件は12号車内で発生。14号車付近の喫煙所にいた大津市の男性会社員(29)は、事件発生直後に若い女性ら20~30人がパニック状態で逃げてくるのを目撃。車両の通路には無数の血痕が連なり、車内は騒然となった。
新幹線は新大阪行きの終電で、イベント帰りとみられる女性らで混雑していた。「何事かと思った。まさか事件とは」。男性は絶句した。
15号車に乗っていた男性会社員(39)によると、走行中に前方の車両から多くの人が「助けて」などと叫びながら逃げ込んできたという。
「怖すぎ。パニックでわからなかったけど、被害者が横通って逃げたみたい」「血だらけの人複数。今小田原で緊急停車」。ツイッターでは車内で事件に遭遇した人々が、現場の様子を生々しく伝えた。
東海道新幹線では平成27年6月、新横浜-小田原間を走行していた東京発新大阪行きのぞみ225号の車内で、男がライターでガソリンに着火し焼身自殺。横浜市の女性=当時(52)=が死亡した。
これを受け、JR各社は新幹線車内への防犯カメラの設置や、可燃物の持ち込み制限を強化。火災発生に備え、救護用の防煙マスクや耐火手袋も装備した。
ただ、駅には多数の出入り口があり、膨大な乗客に対し刃物や危険物の持ち込みを厳密にチェックすることは困難だ。空港のように金属探知機を設置することも実現性が低いとされる。