国の検討会で建物の一部を保存して土地利用を図る方針が決まり、入札を経て東急不動産がオフィスや店舗が入る複合ビルを建設することになった。城郭風の外観のほか、玄関ホールや昭和天皇が休息したとされる応接室などは保存する。
東急不動産によると、34年7月の完成に向け、解体に向けた準備工事に入っており、年内に新館と立体駐車場を、来年には本館を取り壊す計画だ。
一方、遺族会は高齢化が進み、昭和42年に約125万5千世帯だった会員は平成20年に約87万世帯まで減少した。当初、組織の中心は戦没者の妻らで、水落氏は「45万人の方が戦争で夫を亡くしたが、今は3万人まで減った。遺児の平均年齢も77~78歳で、危機感を感じている」と話す。
昨年には戦没者の孫やひ孫らが参加する青年部を発足させた。今年中に全国36支部ができる見通しだ。
新たなビルの一部は遺族会に無償貸与される予定で、事務所などに加え、遺族らが戦争体験などを語るスペースを設ける計画。水落氏は「戦争の悲惨さと平和の尊さを後世に伝えていきたい」と話している。(田村龍彦、写真も)