一家が目指したマネーの総額は1億円近く。家族は団結し、同じ目標に向かって車を走らせた。追突事故を偽装し、保険金をだまし取るために-。「小遣いを稼がせてやろうと思った」。大阪府警に逮捕された家長たる父親は、家族ぐるみの詐欺事件の動機についてこう供述した。摘発された14人のうち8人が親族。知人らと2台の車に分乗し、2年半の間に4件の事故をでっち上げた。休業補償金を上積みするために同乗者を増やすなど、犯行は次第にエスカレート。しかし、欲を出しすぎて車体に不自然な傷をつけたことが立件の決め手になった。
ニセの社印、名刺も用意
《ケース1、平成26年4月、大阪府大東市の市道交差点。信号待ちの軽乗用車に軽ワゴン車が追突》
信号待ちの軽乗用車には父親(66)、三男(25)、長女の夫(41)、親族の少女A(19)の4人。
追突した軽ワゴン車は、運転手の少年B(19)1人のみ。
このB、実はAの知り合い。頼まれてぶつかり役になっていた。
父親は、自分を含む同乗者を実際には稼働していない建設会社の社員と称したうえで、けがをして働けなくなったとして休業損害補償を保険会社に請求した。実際には誰一人けがをしていなかったが、後遺障害が出たと偽ることで、通院交通費など含め総額約1500万円をせしめた。
《ケース2、27年5月、大阪府門真市の府道交差点。乗用車に軽乗用車が追突》
乗用車には父親、妻(61)、次男(28)、三男、少女Aの5人。
追突側の軽乗用車には父親の知人男C(35)ら2人。