家族の行方
迎えた判決。親子関係については婚姻中の「嫡出推定」にのっとり、井上さんの訴えは全面的に退けられた。
今回と同じようにDNA鑑定上の親子関係が問題になった訴訟で最高裁が平成26年に示した判断を踏襲。「生物学上の父子関係がないことが科学的証拠から明らかでも、子の身分の法的安定を保つ必要性はなくならない」とした。
一方で井上さんの損害賠償請求についてはA子に支払いを命じる判決が出た。シングルマザーであるとの井上さんの誤解に乗じて、金品を得られるように振る舞っていたと判断された。夫の誠さんについては「家計は妻任せだった」として賠償責任を否定した。
一連の訴訟で、もっとも心をかき乱されたのは誠さんだっただろう。誠さんは訴訟でこう語っている。
「長男を自分の子と信じて育ててきた。真実を知っても変わらない。子供に罪はない」