その他の写真を見る (1/4枚)
大手旅行会社が、現実にはあり得ない世界に入り込んだ感覚を楽しめる仮想現実(VR)に熱い視線を注いでいる。遠く離れた海外の観光地や歴史的な建物を臨場感たっぷりに楽しめるVRは「体験旅行」で顧客の気持ちを盛り上げるだけでなく、足腰が不自由になった高齢者向けに「疑似旅行」をビジネス化する動きも出てきた。だが、VRがより高度化し疑似旅行が本格普及すれば、「旅行に行かなくていい」という人が増えるジレンマを抱えることになる。旅行業界にとってVRはもろ刃の剣なのか…。
東京ビッグサイト(東京都江東区)で9月に開かれた観光業界の国際見本市「ツーリズムEXPOジャパン」を訪ねた。最終日の24日、エイチ・アイ・エス(HIS)のブースに向かうと長蛇の列が目に飛び込んできた。お目当てはVRで体験するパリ観光だ。
来場客は、周囲360度を見渡せるゴーグル型端末を装着し、ガラス張りの2階建てバスで凱旋(がいせん)門やエッフェル塔などをめぐるツアーに参加。目の前に広がる美しい街並みを眺めながら、フランス料理を存分に楽しんだ。
旅行が趣味という20代の女性会社員2人組は「車内には乗客もいて本当にリアル。まるでパリにいるかのような雰囲気を味わえました」とほほえんだ。