米連邦準備制度理事会(FRB)が、リーマン・ショック後に実施した危機対応型の金融政策から完全に脱却し、正常化を果たすための最終段階へと動き出した。
FRBはかつての量的緩和時、市場に資金を供給するため国債などを大量購入した。この保有資産を10月から減らす。
資産縮小には、利上げと同様に金融を引き締める効果がある。米経済は堅調で、景気拡大局面は9年目に入る。景気の過熱に備えておく判断は妥当だといえる。
今後、景気が悪化したときに、再び危機対応型の政策を効果的に講じる余地を作る意味でも、金融政策の正常化を確実に図っておくことは重要である。
米国の金融政策は世界の資金の流れにも影響する。国内経済だけでなく、世界の金融市場の動きにも目を配りながら、丁寧な政策運営を進めてもらいたい。
米国はリーマン危機後、ゼロ金利政策と量的緩和という非常時の対応を行った。その結果、FRBの保有資産は約4兆5千億ドル(約500兆円)に拡大した。
量的緩和は2014年に終了し、15年末にはゼロ金利政策も終えて利上げを始めたが、大量購入した資産は保有したままだった。これを減らし、市場にあふれた資金を吸収する。
資産縮小は段階的に進めるという。FRBが利上げを決めた直後の16年初頭、世界の金融市場が大きく荒れた。そうした事態を繰り返さないためにも、慎重に行うのは当然である。
金融引き締めのペースにも細心の注意が必要である。
米国が成長しているといっても物価は伸び悩んでいる。今回、追加利上げを見送ったのも、このためだろう。金融引き締めを急ぎすぎて景気を腰折れさせるわけにはいかない。