中国国有の原子力発電会社、中国核能電力(CNNP)は8月10日、「海上原子力施設」の開発を行う新会社を設立すると発表した。中国は2020年代に海上浮動式原発を20基建設する計画とされ、南シナ海の実効支配強化に向けて海上原発の開発を本格化させる構えだ。中国の悲願である原子力空母の建造にその技術が利用される可能性も高い。国際社会からはその動機や安全性に対して懸念の声も出ている。
CNNPの声明によると、同社など5社が計10億元(約160億円)を共同出資する。新会社の設立は「海洋強国建設」や現代版シルクロード構想「一帯一路」などの国家戦略に合致し、「船舶原子力」の軍民融合による発展にも資すると言及した。
12日付の香港紙サウス・チャイナ・モーニングポストは「この技術がどのように、またどこで使用されるのかは声明で言及されていない」と指摘しつつも、海上原子力施設は南シナ海などに配置されるとの専門家の見方を紹介した。
中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報は昨年4月、中国が周辺諸国と領有権を争う南シナ海の人工島などに電力を供給するため、海上浮動式の原発施設建設を計画していると報道。さらに同7月には中国英字紙チャイナ・デーリーが、CNNPの親会社である中国核工業集団の幹部の話として、初の海上浮動式原発の建設が18年に完了し、19年に稼働する予定だと伝えた。
中国の海上原発は人工島への電力供給のほか、南シナ海や東シナ海でのエネルギー開発にも利用されるとみられている。