こうした事実を前提としながら、なお判決は「不当な支配」には当たらないと結論づけた。少し長いが、以下にその判断部分を引用する。
「朝鮮総連は(中略)在日朝鮮人の民族教育の実施を目的の一つとして結成され、朝鮮学校の建設や学校認可手続きなどを進めてきたのであり、朝鮮学校は朝鮮総連の協力の下、自主的民族教育施設として発展してきた」
「このような歴史的事情に照らせば、朝鮮総連が朝鮮学校の教育活動、学校運営に何らかの関わりを有するとしても、民族教育の維持発展を目的とした協力関係である可能性を否定できず、適正を欠くものと直ちに推認することはできない」
「母国語と母国の歴史、文化についての教育は、民族教育にとって重要な意義を有し、民族的自覚・自尊心を醸成する上で基本的な教育というべきである。そうすると、朝鮮学校が朝鮮語による授業を行い、北朝鮮の視座から歴史的・社会的・地理的事象を教えるとともに北朝鮮を建国し現在まで統治してきた北朝鮮の指導者や北朝鮮の国家理念を肯定的に評価することも、朝鮮学校の教育目的それ自体には沿うものということができ、朝鮮学校が北朝鮮や朝鮮総連からの不当な支配により、自主性を失い、上記のような教育を余儀なくされているとは認めがたい」
さまざまな対日工作や事件にかかわってきたとされ、破壊活動防止法に基づく公安調査庁の調査対象団体になっている朝鮮総連。そんな組織が教育に介入することを、判決は「民族教育の維持発展を目的とした協力関係」などと可能な限り肯定的にとらえ、独裁体制を敷く北朝鮮の歴代首脳を評価することもまた「民族教育」の名のもとに許されるとしたのだ。
だから北朝鮮や朝鮮総連による「不当な支配」といえるものはなく、無償化対象としての基準を満たす-とした。