産経抄

米朝の言葉戦いではすまなくなる 8月11日

 中世史家の藤木久志さんの著書『戦国の作法』で、「言葉戦い」という語を知った。源平合戦の時代、実際の戦闘に先立ち、双方が口汚く罵(ののし)り合うのが習わしだった。たとえば『平家物語』は、源氏が平氏から瀬戸内海の制海権を奪った「屋島の戦い」をこう伝えている。

 ▼平氏側が相手の総大将である源義経をまず挑発する。「みなし子」「こがね商人の所従(家来)」「奥州へおちまどひし小冠者か」。源氏側もすぐ応酬する。「北陸道にさまよひ、乞食して、なく●京へのぼ(ッ)たりし物か」。北陸で木曽義仲に敗れて、京都に逃げ帰った平氏をからかった。

 ▼トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩政権との「言葉戦い」がエスカレートしている。「これ以上、米国にいかなる脅しもかけるべきでない。(さもなければ)北朝鮮は炎と怒りに見舞われる」。北朝鮮は聞くに堪えない罵詈(ばり)雑言を国際社会に浴びせてきた。そのお株を奪うようなトランプ氏の脅し文句である。さらにツイートには、核戦力行使の可能性まで書き込んだ。

 ▼北朝鮮が黙っているはずがない。米軍基地のあるグアム島周辺の海上への、弾道ミサイル4発同時発射を検討している、と宣言した。「島根県、広島県、高知県の上空を通過する」「日本列島を瞬時に焦土化できる能力を備えた」などと、米国の同盟国、日本への恫喝(どうかつ)も忘れない。

 ▼米朝双方引くに引けないチキンゲームの行方が、ますます見えなくなった。「驕(おご)れる者久しからず」。「作法」知らずの国家指導者に、人の世の理(ことわり)を説いても、馬の耳に念仏であろう。

 ▼「言葉戦い」では済まなくなる事態、すなわち米朝衝突のリスクが高まりつつある。戦後最大の危機に対して、日本の備えは万全なのか。

●=2文字繰り返し記号

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