係争地である南シナ海・パラセル(中国名・西沙)諸島のウッディー(永興)島に、中国の映画館が建設された。
初日は、「地方幹部の模範」とされる人物のドキュメンタリー映画が上映され、同島に居住する軍人や民間人計200人以上が観賞したという。習近平指導部による宣伝映画にほかならない。
中国外務省は「自国の領土に1軒の映画館を建てるのに、大きな論争となる点はない」という。問題は、そこが中国領土だとは国際社会が認めていない点である。
パラセル諸島は1974年に中国が全域を占領したものの、ベトナムと台湾もそれぞれ領有権を主張している。
中国は、南シナ海を囲む独自の「九段線」を描き、内側全てに歴史的権限が及ぶと主張する。それについては昨年、オランダ・ハーグの仲裁裁判所で退けられたにもかかわらず、裁定を無視して軍事拠点化を続けている。
この海域は重要な交易ルートであり、航行の自由を脅かす行為は断じて認められない。日本など域外の国々を含め「法の支配」の貫徹を求めるのは当然である。
だが、中国は南シナ海の領有権問題はベトナムやフィリピン、東南アジア諸国連合(ASEAN)など、域内の当事者との話し合いで解決するという態度である。
中国は2012年、パラセル、スプラトリー(南沙)、中沙の3諸島を管轄する自治体として「三沙市」の市政府をウッディー島に置いた。同島には約1000人が居住し、図書館や体育館のほか、汚水処理場などのインフラ施設も整備されている。