甘口辛口

金にならない新国立の陸上トラック残さぬ「収益ファースト」にもの申す

■7月27日

 「お父さんは東京オリンピックの陸上代表で、ここで走ったんだぞ」「ウソだ。ここはサッカー場じゃないか」「…」。何年か先、新国立競技場のスタンドでこんな会話をかわす親子がいるかもしれない。2020年東京五輪・パラリンピック主会場の新国立を大会後、球技専用にすることで政府が最終調整に入ったという。

 陸上のトラックの位置に観客席が増設され陸上競技場としての機能はなくなる。なるほど、サッカー場としては臨場感が高まり将来のW杯招致につながる。コンサート開催にもより都合がいい。アスリートファーストならぬ収益ファースト。「カネにならない」陸上には用がないらしい。

 新国立はデザインや建設費をめぐる混乱で着工が1年2カ月も遅れた。工事を急ぐあまり23歳の現場監督の自殺という痛ましい事案が起きた。19年11月完成予定だが、大幅遅れも予想され陸上としては五輪・パラリンピックが最初で最後の大会になるかもしれない。「二度とここで走れない」と日本選手はいきなり感慨に打たれるのか。

 「改修で十分使える」という建築家たちの訴えに耳を貸さず旧国立は取り壊したのに、故三波春夫さんらが歌った1964年の「東京五輪音頭」が大会機運盛り上げのためによみがえり「新東京五輪音頭」として発表された。時代錯誤というか、やっていることがチグハグにしか見えない。

 新国立が球技場になると都内で陸上の日本選手権すら開けなくなる。五輪開催都市として情けない。都が所有する調布市の味の素スタジアムを軸に国際基準に合わせて整備する案もあるようだが、どこまで具体性があるのか。母屋を追われる陸上界から強い声があがってもいい。 (今村忠)

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