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激戦を戦い抜き、はきはきした口調で振り返る高安の顔は誇らしげだ。「こつこつ頑張ってきたのがやっと報われた1勝だと思う」。勝てば大関昇進を手中に収める横綱戦で見事に日馬富士を撃破した。
過去の対戦は4勝14敗。大一番を前にしても「周りが見えていた。落ち着いた精神状態だった」という。心は冷静だったが、取り口は激しかった。
右から張って左四つ。立ち合いの踏み込みが鋭く「しっかり取りたかった」という右上手を引いた。投げの打ち合いでいったん離れ、後ろ向きにされかける。それでも慌てず素早く向き直って土俵際で相手の押しをこらえる。そして、前のめりになった横綱をはたき込み。どっと館内が沸いた。
これで大関昇進の目安となる3場所合計33勝を1つ上回った。審判部は昇進の是非を議論する会議を開くことを決定。二所ノ関部長(元大関若嶋津)は「横綱に勝っているのは大きい」と語り、異論は出ないだろう。
中卒たたき上げで入門して12年。両親が館内で見守る中、大仕事をやってのけた高安は「これで一つ親孝行ができた。相撲をやってきてよかったと改めて思います」と感慨深げだ。迎えの車に乗り込んだ直後。後部座席の母・ビビリタさんから抱擁され、少しだけ頬を緩めた。(藤原翔)