コンピューターの発達によって人が仕事から追われる。20年前ならSFの中だけと笑っていられた話が、昨今現実味を帯びてきている。そして、将来人工知能に取って代わられる仕事が少なくないと騒がれている。
「教えて!goo」でも「法学部とコンピューターは関係があるかないかについて」という質問が寄せられていた。ちなみにこちらの投稿では法学という分野においてコンピューターの存在がどのような意義を持つかということを問うている。
法学とコンピューター
「法律分野でも、今はコンピューター無しには仕事ができません。すでに応用されているし常識になっています。主体は検索でしょうね」(cypress2012さん)
「少なくとも法律関連の事務作業では省力化、判例などデータの検索の容易さなど効率化が進みますが、それは法律事務にかぎったことではありませんよね」(jess8255さん)
「事例を打ち込むと、判決が出て来る、てのがやられていますよ。弁護士が失業するんじゃないか、と怖がっているひともいます」(hekiyuさん)
確かに法学においてもコンピューターの普及は進んでいるが、それはどちらかといえばメリットとして捉えられることが多いようだ。
弁護士という職
では、コンピューターの発達が進んでいく中、弁護士にどんな役割が求められているのか、交通事故の過失割合を具体例に井上義之弁護士に話を伺った。
ちなみに過失割合とは、例えば交通事故が起こった場合に、過去の判例から類似の事故を探し、その際に両当事者のどちらにどれだけ責任を与えているかを示した比率である。逆を言えば、過去にたまっている判例データは膨大であるため、どれか一つに当てはめ、裁くことが可能ならば、そこに弁護士が介入する余地があるのか疑問ということにもなる。
「過失割合に関して、過去の類似事件の裁判例が参考にされることは事実です。しかし事実関係が争いになったり、過去のどの事案と類似しているかが争いになる等、実際の交通事故の過失割合が過去の判例でほぼ決まるということはありません」
なるほど。そもそも過去のどの判例と類似しているかの主張が異なる場合もあるという。確かにそうなれば自身の主張の正当性を示す必要があるだろう。そしてそこに依頼者の代理人である弁護士の存在意義があると話す井上弁護士。
「例えば交通事故の被害者であれば相談に来られた際に、まずは事実関係と証拠関係を整理し、法的な問題点を検討した上で、解決に向けた流れ、ある程度の事故処理の方向性を示します。そして、被害者から依頼を受けると、ご本人の利益や個々の事情に応じて、最良の結果を目指して代理人として対応していきます。被害者側の主張がなるべく認められるように主張と証拠を整理し、場合によっては裁判を視野に入れつつ、加害者側と交渉していくことになります」
交通事故の被害者となれば、身体的にも精神的にも正常であるとは考えがたい。弁護士はそんな被害者のために、被害者と同等の思いを持って、被害者の正当性を代理人として主張していく。一方加害者は、如何に自らの過失を減らすかということに全力を注ぐ。それは後ろに控えている交通事故のプロフェッショナルである保険会社の思惑と一致する。このように考えると、事故後、感情的になっている両当事者の立場を考えたら、たしかにコンピューターでは代用できないのかもしれない。そしてこれは人とコンピューターではそれぞれ求められている事が違うということの一つの示唆にならないだろうか。つまり対立ではなく共存という関係性で捉えることの一つの良いモデルといえるのかもしれない。
(ライター 島田俊)
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