「チームの状態や選手の特徴などの情報も重要。試合の盛り上がりやファンの興奮度を想定して、駅の混乱を避けるんです」
試合後は「手配師」と呼ばれる補佐役の社員3人らとともに、スムーズな乗客誘導に努める。こうした運行はプロ野球だけでなく、春夏の高校野球でも行われることがあるという。
かゆいところに手が届くようなきめ細やかな配慮は阪神電車の最大の武器だ。
とくに加速・減速に優れた「ジェットカー」は阪神電車の代名詞。車両の機能に加え、接続のよさやダイヤの工夫によって成し得た「待たずに乗れる阪神電車」は今も続く魅力でもある。
阪神電車の梅田-神戸三宮間の駅数は32駅で、競合する阪急神戸線(16駅)、JR東海道線(15駅)の2倍。駅間が短い阪神にとって素早い加速・減速は、他社とのスピード差を埋めるために必要な技術だ。
昭和33年に登場した普通用大型高性能車両の通称「ジェットカー」は「ジェット機に匹敵するぐらいの加速減速の良さ」と例えられるほど。近鉄のラビットカーに次ぐ高加速・高減速車両で、阪神はジェットカーの導入で普通列車の梅田-三宮間の所要時間を約15分短縮させた。
平成27年に投入された13代目5700系は、加速が1秒あたり時速4キロ、減速は1秒あたり時速4・5キロと、現行の車両で全国トップの性能を誇っている。